緊急事態宣言前後の『#北海道旅行』Instagram投稿を分析してみた!

Pixial レポート
「#北海道旅行」にみるInstagram投稿動向と新型コロナウイルス感染症の影響の考察

株式会社ジャパン・カレント

自粛要請、自粛解除後の旅行はどのように?
緊急事態宣言前後の「#北海道旅行」
コロナ禍の影響前後におけるInstagram投稿をPixialにより各種分析を行いました。

1. はじめに

写真共有アプリ「Instagram 注1」は、世界で最も成長しているソーシャルメディアの1つであり、その投稿内容には多くの写真とともに人々の「体験」や「意図」が現れています。当社はこれらの投稿を集合データとして分析し、「人々の行動変容」や「消費活動」の傾向などをレポートとして発信します。本レポートが、各企業や団体の皆様の参考になれば幸いです。

注1:InstagramはFacebook,Incが提供している無料の写真共有アプリケーションです。

2. Instagram上の投稿の主な分類

Instagram上の投稿は、主に以下の4つに分類されます。投稿データには、これらの分類があることを認識した上で分析する事が重要です。

  1. 一般消費者の「体験の共有」投稿
    • 写真と共に「自身の体験」を掲載し、「共感」を得たいと思う投稿
    • 特徴:ハッシュタグやキャプション(コメント)に投稿者の内発的な意図が見えます
  2. 発信力の高い方々による「体験の共有」投稿
    • 「芸能人」や、いわゆる「インスタグラマー」、「ユーチューバー」など、多くのフォロワー(継続的な閲覧者)を持つ「発信力のある」方々による「自身の体験」を掲載した投稿
    • 特徴:投稿に対して閲覧者から多くのコメントが寄せられる傾向があります
  3. 有料広告配信:企業による一般消費者向け有料広告
    • 企業がFacebook社の広告配信機能を介して、有料で特定のセグメントの閲覧者に対して発信される有料広告です。映画の予告編やCMなど、動画での広告が増えています。また、「いいね」や「フォロー」、「コメント記載」を条件に抽選で賞品が当たるような、キャンペーンが行われることもあります。
    • 特徴:閲覧者には「広告」と明示され、キャンペーン以外にコメントがつくことは稀です
  4. 広告宣伝投稿:企業/商業店舗などからの集客発信
    • Facebook社の広告配信機能を介さず、企業がフォロワーに対して直接発信する宣伝記事や、店舗、個人商店などから、一般消費者や地域の方々に向けて発信される宣伝のための投稿です。
    • 特徴:閲覧者の検索に少しでもヒットするように、数多くのハッシュタグをつける傾向にあります

3. 分析対象「#北海道旅行」

今回は、今年2月上旬から9月上旬までの期間に「#(ハッシュタグ)北海道旅行」をつけられた投稿注2を調査し、緊急事態宣言前後の投稿について考察します。

注2:Instagram上に投稿され、かつ調査時点で公開(誰もがInstagram上で閲覧できる状態)の投稿のみを対象としています。対象期間に投稿されていた全ての投稿ではありません。

①時系列分析

2月5日~9月9日の期間に「#北海道旅行」の投稿数の推移グラフ

2月5日~9月9日の期間に「#北海道旅行」の投稿数の推移グラフ

【考察】

北海道は全国に先駆けて、2月28日に独自の「緊急事態宣言」を発出したこともあり、それ以降6月までは大幅に投稿数が減っています。6月16日観光庁が「GoToトラベル」の事業概要を発表したこともあり、以降は旅行業者などによる広告投稿も再開されたとみられ、投稿数は回復基調となり、8月中旬にはほぼコロナ禍前の水準にまで投稿数が戻っています。特に「旅行」に関するハッシュタグであるため、人々の移動と投稿の動向が一致したと考えられます。一方で、投稿数と投稿者数、いいね数はほぼ同じ推移をみせているのに対し、コメント数については移動制限期間中でも一定の数がみられ、「投稿に対する直接的なコミュニケーション」は移動制限期間中にも関わらず、もしくはそれだからこそ、その分多く行われていたのではないかと推察できます。

②投稿の分類

同期間の全投稿をいいね数とコメント数で分布した図

同期間の全投稿をいいね数とコメント数で分布した図

【考察】

投稿グループ①[いいね数が2000を超えるが、コメント数が20未満]

北海道の綺麗な景色を写した、いわゆる「映える写真」かつ企業アカウントの投稿が多くみられます。良い景色の写真が見られたことで、閲覧者は「いいね」というリアクションをするものの、コメント欄を使ったコミュニケーションを双方求めておらず、いわゆる企業によるブランディングや認知度向上を目的とした投稿が多いと考えられます。

投稿グループ①の写真イメージ 注:写真はイメージです

投稿グループ②[コメント数が100を超える]

フォロワー数が多い(1,000名~数十万)、いわゆるインスタグラマーやユーチューバー、芸能人など発信力の高い方々による投稿が多くみられます。なお、このゾーンには企業アカウントによるコメント欄を使った「キャンペーン投稿」もみられることがありますが、今回の調査範囲では特にそのような投稿はありませんでした。

投稿グループ②の写真イメージ 注:写真はイメージです

投稿グループ③[コメント数20~100]

大多数の投稿はこのグループに位置し、いわゆる一般消費者による「体験を共有する」投稿です。「#北海道旅行」の範囲においては、特に海外からの旅行者(キャプションが外国語のもの)は雪に関する投稿が多いように見えましたが、入国制限後の春から夏にかけて海外からの旅行者の投稿がほとんどない事も一因と思われます。

投稿グループ③の写真イメージ 注:写真はイメージです

上記以外の範囲(ある程度のいいね数やコメント数がみられる投稿)

企業アカウントや個別店舗などからの宣伝、インスタグラマー予備軍の投稿が混在しているゾーンです。上記①~③の投稿に加えて、GoToトラベル関連のキャンペーン投稿なども見られました。

③投稿時間帯分析

コロナ禍による移動制限前(2月)/緊急事態宣言前後(4月)/移動制限緩和後(9月)のそれぞれの時期における投稿「時間帯」を分析する事で、人々の行動様式変容の有無を考察します。(各グラフ上の赤い線が昼の12時、薄い青色の帯が19時~23時を示しています)

2月8日(土)~2月16日(日):時間帯別投稿数[移動制限前]

2月8日(土)~2月16日(日):時間帯別投稿数[移動制限前]

【考察】

投稿は19時~23時の夜の時間帯が多く、次に昼の12時に多い傾向がみられます。Instagramにおいては、一般的に夜の時間帯に一日を振り返った投稿をする傾向にあり、「#北海道旅行」においても同様の傾向がみられました。次いで昼の時間帯が多いのは、ランチの食事を撮影した写真の投稿が多いことが理由と思われます。

4月4日(土)~4月12日(日):時間帯別投稿数[緊急事態宣言前後]

4月4日(土)~4月12日(日):時間帯別投稿数[緊急事態宣言前後]

【考察】

2月に比べ、投稿数そのものが大幅に減っていることに加えて、投稿時間帯にもばらつきがみられます。緊急事態宣言による自宅待機等により、移動制限のみならず生活リズムも変わり、これらの人々の行動変容の影響がInstagramの投稿時間帯にも表れているようです。

8月29日(土)~9月6日(日):時間帯別投稿数

8月29日(土)~9月6日(日):時間帯別投稿数

【考察】

投稿時間帯がほぼ2月上旬と同じような傾向を示しています。人々の行動様式が平常時に戻りつつあることが、投稿時間帯からも見て取れます。

④関連ハッシュタグ分析

「#北海道旅行」の投稿に、同時に付加されたハッシュタグを分析する事で、北海道旅行に関連性の強い事柄を考察します。

関連ハッシュタグ投稿数上位25個を「一人当たりの投稿数」順で並べ替えたグラフ

関連ハッシュタグ投稿数上位25個を「一人当たりの投稿数」順で並べ替えたグラフ

【考察】

一人当たりの投稿数が5件を超えるハッシュタグは「広告宣伝」を目的とした投稿が多い傾向にあることがこれまでの当社分析で判明しており、一般消費者の投稿と分類するためにデータを並べ替えてから分析しています。一般消費者が「#北海道旅行」と同時に言及しているハッシュタグとして特徴的なものは「グルメ」と「地名」です。食事の投稿が多いのは、写真を投稿するInstagramの一つの特徴ですが、北海道は観光エリアが広大であることもあり、北海道の「どの地域へ行ったか」を同時に言及することが多いようです。地名の中では北海道の空の玄関口である「札幌」が圧倒的に多く、次に「小樽」、「函館」、「富良野」、「美瑛」がほぼ横一線で並んでいます。調査対象期間においては、「札幌-小樽地域」、「函館」、「富良野-美瑛」の3地域への訪問が多いように見えます。なお、対象を上位50件までに広げると「旭川(2,166件)」「知床(1,539件)」などの他地域も出現します。

⑤地名別の時系列分析

上記④の考察で出現した地名のうち、札幌/小樽/函館/富良野に限定して時系列投稿数を分析します。

関連ハッシュタグのうち、4つの地名に限定して時系列投稿数を示したグラフ

関連ハッシュタグのうち、4つの地名に限定して時系列投稿数を示したグラフ

考察

「札幌」の投稿は「北海道旅行」全体の投稿動向と同じく、緊急事態宣言前後の全国的な移動制限のかかっている時期の投稿が明らかに減っています。札幌の近郊都市である「小樽」は総量として札幌と差があるものの、観光シーズンの8月末までおよそ札幌と同じような投稿傾向になっていることから、札幌と小樽は同じ観光ルートに組み込まれているとみる事もできます。一方で札幌から距離のある函館については、コロナ禍とは関係なく全期間で投稿数が一定しています。同じく札幌から離れている富良野については、7月下旬より徐々に投稿数が伸びており、美瑛を始め、丘陵地帯の一面の花畑が観光資源となっている富良野地域は、夏の観光資源がある一方で、冬の観光資源が少ないと推察できます。

総括

今回は、コロナ禍の影響が顕著に表れたと考えられる「旅行」のうち、季節性や地域性も同時に見て取れる「#北海道旅行」を題材に、当社が提供する「Pixial」の基本機能である「ハッシュタグ分析」で出力した各グラフを基に考察したレポートをお届けいたしました。
個々の投稿からだけでは見えなかった、あるいは感覚値でしかなかった世界が、データで示されることで、より鮮明になって見えてきたのではないでしょうか。
当社では、今後も引き続き、様々な投稿データを分析したレポートを発信していきます。また、投稿画像群をAIにより「画像を画像のまま分類する」独自の手法により、「ハッシュタグ分析」だけでは見えない、より詳細な考察についてもレポートしていく予定です。